予告された倒産の記録 その31

■ 悪のソフトバンク幻想


 WILLCOM社内にあるSOFTBANKへの印象。
 なぜそうも軽蔑するのか。ウィルコムソフトバンクイーモバイル格下に見ていた。奴らは一見結果を出しているが、それはモラル欠如の卑劣な手法であり、詐欺まがいのマーケティングで世間を騙しているに過ぎない、と。


 たとえばデータ通信の速度。カタログに掲載する数値は最高速度(ベストエフォート)だが、実際の速度(実速)はひどいもの。奴らのネットワーク(NW)はボロボロだ。まともな技術者がいない。実速ならPHSもさほど見劣りしないはず。PHSのNWは質も高い。通信事業者の誇りが奴らにはない

 ただ、ウィルコムはPR下手だから負けている。PR下手は、実直まじめさの裏返しなので悪くない。PHSの品質には自信がある。使ってもらえばわかるはず。奴らはペテン師、そのうち失速する。世間も気づく


 前にも触れたが、SOFTBANKを叩く記事が出ると、誰かがわざわざ雑誌を買ってきてコピーを回覧する。WILLCOMの取引先の中にはそういう社風を知り、あることないこと吹聴する人も。広告代理店ならではの情報… 業界コンサルならではの情報… あそこはもう潰れますよ。

 社員の中にも、ウィルコムへ来る前の仕事でSOFTBANKや@masasonにひどい目に遭わされた、あれは社会の敵存在しちゃいけないまことしやかに吹聴する者がいたり。しかし、所詮は噂レベル。半分遊びならともかく、なぜそれほどまで「悪のソフトバンク」幻想固執するのか…


 成果を出せないことの言いわけ? それもある。もっと自分たちで動けばいい。だが、ウィルコムはヤツルギ氏更迭の前例もあるとおり、成果を出した者の成果を逆手にとり、陰で勝手なストーリーを作り上げて否定しようとする陰湿な社風。成果よりも、情報操作が大事。


「三つの頭」が派閥の力でヤツルギ氏を追いだした。そう思う社員たちの集団は、組織の異様なあり方に日々接するにつれ、次第に主体性をひそめていく。ポジショントークのスキルこそが保身に必要と体に染み込ませる。

 ところが、主体性をひそめるほど水面下でエゴが膨らみ、いっそうやっかいな社風に。
 とくにWILLCOM中間管理職は表面的に上司に従い、裏で消極的な反抗を繰り返す。だから仕事がきちんと進まない。おかしくなる。その態度を部下がまた見る。それが当然となる。


 もちろんWILLCOM社員全員ではないが、とてもタチが悪い。経営者の立場から見て、表向きは従順で、裏でこそこそ消極的な反抗をする中間管理職ほど、面倒でやっかいな部下はいないのではないだろうか。



 WILLCOMの一部は会社分割され、SOFTBANKへ移管。
 人はどうする。
 WILLCOMでさんざん「悪のソフトバンク」幻想を謳った社員は、経営者が変われば表向きは神妙にし、裏で面倒なことをする。
 それで会社は潰れた。
 潔く前向きになれる人材を見抜けるか?
 難しそうだ。



 .@masasonさんがWILLCOMを引き取らなかったのは、金やPHSの将来性もあるが、ウィルコムイズムで倒産した会社にあるだろう「ヒトの問題」を考えたからではないか、とも思ってしまう。誰かから聞いたのかもしれないし、察したのかもしれない。賢明な経営者なら第一に考えること。

 また、成果というのは本当にやっかい。元ドコモの@tnatsuさんの元部下が「おサイフケータイの父」を名乗っているのは有名。彼はそれなりに貢献したのかもしれないけれど、ときには案件に多少関わった者、チームの隅っこにいた者が「〜の父」と謳ったりすることもあったり。


 仕事をする上で、潔さ、深いところでの正直さは本当に大切。でも、それは希少な存在。



 そうそう、WILLCOMの管理職さん、パワハラなんてしてる場合じゃないですよ!!



サービス残業の話のつづき


 さて、本編… 残業自主規制の話。まずは、前回ツイートを再掲。

【再掲】モバイルコンテンツ業務は、新端末やコンテンツが出る度、サイトのバグチェックに時間を要する。前述したとおり、来るもの拒まずで品質管理をしないコンテンツ群は、ユーザの期待に応えられない。が、精査再検討されることなく増え続け、比例して労働力を奪い続けるという悪循環。


 経営戦略会議から外され、データ通信ARPUを向上させろと言われたテラダ氏は、良くも悪くもコンテンツ業務に執着した。
 サービス計画部に分配された残業時間数の多くを割り当て、さらにオーバーしても構わなかった。

 全社的な残業時間の管理は、経営戦略会議での毎月報告によってなされた。本部単位の報告だが、サービス開発本部はスマートフォン企画業務とコンテンツ業務の残業時間が突出していたため、他部門を締め付けるだけでは吸収しきれない。

 いつも残業時間の上限値を超えた理由を問われ、「スマートフォンとコンテンツ」と答えた。経営陣はなぜかそれ以上問いたださない。テラダ氏にしてみれば、残業時間の上限値を言いなりになって守るよりも、データ通信ARPUを上げて見返してやる方が重要だった。

 だが、無視しすぎるのもマズい。よって、溢れた残業時間の調整弁として、サービス計画部の他のセクションや次推室の業務が締めつけられた。

 サービス計画部の従来の残業時間の平均値は1人あたり60時間/月。これが50%削減され、30時間/月が上限値。それに対し、次推室は1人あたり17時間/月が上限値。

 次世代PHSの先行きが不透明とはいえ、社内でも表面上は「着実に進んでる」風。立上げ準備の業務(というか、不毛なつじつま合わせの業務)はいくらでもあったのに、厳しい残業規制。それはテラダ氏とシモム氏の不仲によるところも大きいが、シモム氏はテラダ氏のプチ嫌がらせをすんなり受けた。


 残業規制が厳しくても(シモム氏のような)管理職の給料には影響ないし、非管理職の部下には残業時間の上限値を示して、今まで以上にやるべきことをやれと指示すればいいだけのこと。それで部下が文句をいうなら、業務遂行能力なしと、評価に影響させればいい


 ウィルコムは業績評価と年収を連動させる給与体系だ。業績評価制度である場合、前提としてフェアな労働環境が原則。個々の社員に対し、労働時間数の偏りを助長したり、差別的な管理をすることは、本来マズい。

 ま、成果を出しても、成果として一切評価されない社風なので(ときには更迭も。ヤツルギさん…)、業績評価制度の存在は、建前と本音のオトナチック病を悪化させるだけのものだったが… ただこれはウィルコムだけのことではないだろう。


 社員個人の残業時間の管理方法は、自主申告制。当人が日別にやった分だけシステムの勤務表に入力する。後で上司がそれを見て、承認する。日々承認する上司もいれば、半月分をまとめて承認する人もいる。

 だから部下も数日分をまとめてシステム入力したり。給与計算締め日の毎月末には、「勤務表データをすべて入力してください!」と人事部から全社員へメールが来て、皆あわてて入力したり、承認したり、という日常。


 前にも少しつぶやいたが、ウィルコムのモバイルコンテンツ業務は、仕事のやり方を抜本的に見直す必要があった。

 そもそも大前提として、ウィルコムユーザは音声利用を目的とする「2台目ユーザ」が多い。1台目の他キャリア端末で質の高い便利なコンテンツをサクサク使えるのに、わざわざ2台目のウィルコムを使うわけがない。

 ではウィルコム1台のみのユーザーをターゲットにするか? しかし彼らのことはほとんどわからない。データ通信ARPUでどれくらいの伸びしろがあるのか。そのためにどんなコンテンツを用意すればいいか。限られたリソースをその方向へ注力させるべきかどーか。判断材料が何もない。

 他キャリアのメジャーコンテンツで、ウィルコムにないもの。それを用意すればいいという発想も、金と交渉と技術の問題がある。右肩上りのコンテンツ会社は、ウィルコムにさほど興味なく、「通信キャリア」の看板など交渉材料にならない。ウィルコムはとにかく金をかけずやりたい。

 金をかけず、社内調整もなるべくせず、これまでの延長線上で、手間をかけず、ぽんっと出せばユーザーがガバっと飛びつくコンテンツ…(そんなものあるか!)…あるかもしれないが、すぐには見つからない。まるで雲をつかむような妄想。

 なら発想を変え、今すでにあるコンテンツを見直せばどうか? 赤字続きのものは切り、作業負担を減らす。それで少なくとも残業時間を減らせる。ただ、コンテンツの数もばっさり減る。見栄えが悪い。何だか斜陽な感じ。枯れ木も山のにぎわいか、なぜか選択と集中をしない。

 よって妄想の雲がふわふわする中、コンテンツ担当は日々の作業に忙殺される。忙しいけれど成果は出ない。単純に作業量の多さで残業しているため、多忙なわりにのんびりやって休憩時間が多いようにテラダ氏には見えるが、締めつければ明白すぎるサービス残業の違法行為だ。

 残業自主規制はするが、「(残業を)やった分はきちんとつけるように!」と、いちおうの言葉だけでも部下へパフォーマンスするよう、上級管理職は人事部から指示を受けていた。サービス残業を問題化させないための対策の一つである。

 したがって明白すぎる残業を締めつけるのはマズい。その点でコンテンツ担当は恵まれていた。営業部門などは建前と本音のオトナチック病がひどく、部の会議が夜に行われても、残業時間にできない

 手口はこのとおり→ 部のトップが会議の出席者に「(今日の分は)ちゃんと残業つけろよ!」と言うが、会議後に直属上司がやって来て、「おい、わかってんだろうな!(残業つけるなよ!)」と釘をさす。ありがちな手口。タチが悪い。

 部下の目から見ると、部門トップの発言がパフォーマンスなのか、直属上司が姑息に勝手な気を回しているのか、わけわからない。推測するにパフォーマンス説がこの会社ではいかにもありそう。いずれにしても損をするのは自分… そんなことばかりなので、ねじれた社風も当然か…



 このところ、まじめにつぶやきすぎかな?w ところでKDDIau)に個人情報を預けている方々へ。あそこの一部のモラルなき社員は身勝手な思い込みで個人情報らしきものを簡単に漏えいするようなのでご注意を。オーコワwww

 そして、KDDIau)の一部のモラルなき社員は、ツイッターのアイコンから自分の顔写真を慌てて外し、ヘンテコな絵にすり替えたwww 事実はフィクションより奇なり。



 ずっと成果を出せずにいる日々の作業を、止めることも見直すこともせず、不毛に続けるだけ。規制による限られた残業時間はすべて浪費され、新しく何かを始める時間がない。そんな状況でテラダ氏にしてみれば、マシタ氏がやっている医療センタの案件になど与える残業時間はなかった。

 医療関連は法人部門の業務であり、余所の業務など知ったことではないとテラダ氏は考えた。医療部門の責任者とも仲良くない。マシタ氏の説明を受けても、向こう(医療部門)に資料を作らせろ、と言うばかり。が、電子新聞の案件なので、マシタ氏にしか資料は作れない。レクチャーするにも時間がいる。

 年明けのプレゼンには医療部門の部長と新聞社の人も参加する。それに京都の医療センタはキクガワ氏とも親密な重要顧客。投げ出すわけにいかない。テラダ氏だけが、会社や顧客より自分のことにとらわれ、残業時間がどうこうとトラブルを起こす。 たかが数時間程度の話なのに

 ちぃぃぃぃーーーーーさい男だなぁーーーーーそんなんじゃあニッポンの未来は…(誰?)

 さらに面倒なのは、テラダ副本部長の保身根性丸出しの近視眼的態度を、部下のツミオ担当部長やオヒデGLが支え、肯定するというヒエラルキー構造
 残業できないなら、資料作れませんよ、とマシタ氏が言うと、彼らはどこかで仕込まれたような台詞を言った。


 資料は作れ。残業はするな。業務時間中に何をしてた。時間内にできないのは自分の責任。自分の責任なら主体的に資料を作ればいい(…主体的?)。家で作れ(…ああ…そういうことか…)。自分のスキルが至らずこうなったのだから当然だろ、と。


 どこか(人事部あたり?)にマニュアルがありそうな陰険なもの言いである。
 個人のスキルという曖昧な問題にしてしまえば、後は権力で押し切れる。部下がプライベートの時間に、主体的、自発的に資料を作るのだから業務でなく、サービス残業にならないというわけだ。

 無駄に細かく、陰険、意固地になる。それもまた偏った残業規制の大きな弊害。
 しょうがないのでマシタ氏は、職場で資料の半分を作り(残業をつけず)、残り半分を年末の自宅で作った。下準備を除けば、たった6時間程度のこと。気にするほどじゃない。マシタ氏はビールを飲みながら冬の晴天を見上げた。



 そういえば、サービス計画部へ異動したマシタ氏の席に、次推室の新人(ツヅキ氏とタケミ氏)が、わざわざ別々に年末の挨拶に来た。
 挨拶の後、とくにタケミ氏は何か言いたそうだったな…、とマシタ氏はふと思いだした。
 2008年が過ぎる…



 WILLCOMの未来をひらく次世代PHSがサービス開始予定の2009年。
 実際は失敗が露呈し、キクガワ社長退任、事業再生ADR会社更生法申請と、傍目には急転直下したように見える2009年が、年末の雲ひとつない青空の先に、明けようとしていた…



 あっっっ!!



 2009年元日。タソモト氏は、キクガワ氏が大きな太陽になった夢をみて、目を覚ました。体じゅうに嫌な汗をべっとりかいていた。


(2010年5月26日〜28日分まで掲載)